実践編〜「あとかくしの雪」を使って〜
[実際に解釈の手順にそって行うと]
1.全文を読み、粗筋をつかむ。
貧乏な百姓がいて、寒い夕方、旅びとがとめてくれといったからとめた。そして、もてなすもの
がなかったので、隣の家から大根をぬすんで食べさせてやったという話である。
2.主人公の確認
この場合、百姓が旅びとがきたことによって、大根をぬすんだりするという行動の変化がある
から、[百姓]だろう。
3.場面わけをする
起 百姓が住んでいるということが話のはじまりだ。 1行が[起]になる。
承 そこへ、旅びとが来て、とめてくれとお願いをして、百姓はとめることにしたというのが、
話を展開している。2行〜10行が[承]になる。
転 百姓がとなりの家から大根をぬすんできて、旅びとに食わしてやたことが、転換になる。
11行〜16行が[転]になる。
結 百姓の足あとを雪が消してくれたということが結末になる。17行〜18行が[結]になる。
19行〜20行は、おまけとしてのお話になるだろう。
4.主人公の行動・心情の変化の大きい場所を探す。
主人公は百姓だから、百姓の行動が表れている文をさがす。そうすると、7行と8行の旅びとに
対する返事をするところが一つと、12〜14行の大根をぬすむという行動を起こしたところの2ケ所
である。
5.中心場面の設定
どちらの行動の変化が大きいだろうか。ぬすむということが大きいと思うから、[12行〜14行]
あたりが大きな変化であるから中心場面はここということになる。
6.中心場面あたりで、つじつまがあわないことや、疑問をあげてみる。
*ぬすみにいく原因は何か?〜[行動レベルの問題]以後[行動]
*「なにもない」「なにもいらん」という両者の契約ができているのに、なぜ、盗みに行くのか?〜[行動」
*「しかたがない」(どうにも、しょうがない)という状況であるはずがないのに、どうして「しかたがない」
と言っているのか?〜[行動]
*「けれども」という接続語は逆接であるはずなのに、前件は何もないといっているし後件も何もないと
いっている矛盾する。〜[接続語]
*ぬすむということは、今までにもあったのか、なかったのか?〜[強調・比較]
*百姓は、盗みがみつかってもいいと思っていたのか、思っていなかったのか。〜[心情]
*なぜ、晩になってからいったのか。〜[時間]
7.問題ができたら、その中で大問題を設定する。
主人公の行動の変化の理由
*ぬすみにいく原因はなにか?
・「なにもない」「なにもいらん」という両者の契約ができているのに、なぜ、盗みに行くのか?〜[行動]
8.大問題ができたら、関係がありそうな、その他の主人公の行動の変化の場所で、疑問を考え、中心場面との
関係を考える。
盗むことが大きな行動の変化であるが、その前に旅びとをとめるという行動があるので、その場面で、問
題を作ってみる。
*「ろくにない」ということは全然ないのか、少しはあるのか?〜[辞書]
*なぜ、百姓は、とめる気になったのか?その原因は何か?〜[行動]
*百姓はすぐとめる気になったのか、なやんでから、泊めようと思ったのか?〜返事をするまで、どのくら
い時間があったのか?〜[時間]
9.問題のつながりを考える。
なぜ、ぬすんだか?〜[行動](ぬすみということが、大変なことで、みつかると重い罰をうけなくてはならな
いという前提で考えていく。)〜そうでなくては、雪が足あとをかくすのが、美談とはならない。
ぬすむということは、よっぽどの理由がある。それを解決することが追求である。
*もてなしてやりたかったが、何もなく、いろいろ考えたが、ぬすむ以外にないと思ってぬすんだ。
*いつからもてなそうとおもっていたのか〜[時間]
* 前の文から見てみる。
*なぜ泊めたのかを解決しなければ、なぜぬすんだかはわからないのではないか。
* なぜ泊めたのか。〜[行動]
*悩んで泊めたのか、すぐに泊めたのか。〜[時間]
*泊めるという返事はどのくらいの時間考えてしたのか [時間]
*どのような言い方で泊めたのか。 〜[様子]
10.問題を解決するために、一文一文をじっくり吟味する。
[どのような言い方で泊めたのか。〜会話文を吟味する。]
「ああ」〜肯定・承知を意味する声。
「ええ」〜よい
「とも」〜疑い・反対の余地無く強く断言することを表す。
「まあ」〜「いろいろしたい、言いたいこともあるが、ひとまず」と言って相手をなだめたり、何かをすすめること。
以上のことから、この言葉は、肯定的に言われたことがわかるひとまずということからも、旅びとがたのんですぐ
に言ったということになる。
[なぜ、すぐに泊める気になったのか]〜[行動]
旅びとの様子はどうだったのか〜[相手]
「とぼりとぼり」〜とぼとぼ元気の無い足どりで、寂しく歩くこと言い方も元気がない「とめてくれるわけに
いくまいか」
旅びとのようすを見て、すぐに泊める気になったし、まあ、あがってくれということから、見たらすぐ泊める
気にさせるような様子だった。〜旅びとは危機的な状態だったのではないか。旅びとのようすを見て、泊め
る以外に考えられなかった。泊めないと死んでしまうかも。
[もてなそうと思ったのはいつからか]〜[時間]
「もてなす」〜心をこめて、客に対応する。とりあえず、上にあがってもらうことが、この時点でのもてなしで
あり、なんとかしなければという気持ちは、会った瞬間から思っていた。
[なぜぬすんだのか]〜[行動]
何か、食わしてやらないと衰弱しているからどうにかなると思った。(死んでしまうかも)
[ぬすみを見つかってもいいと思ったか]〜[心情]
旅びとの死をふせぐために、見つかってもいいと考えた。
[なぜ、晩になってからなのか]〜[時間]
ぬすむ最中にみつかると、食わしてやることができないから、
11.教材解釈が完了する。
百姓は、衰弱し切った旅びとがたずねてきた時、ちゅうちょなく泊めることにした。しかし、食べるものもろくにな
かったので、このままでは死んでしまうと思い、隣の家に大根をぬすみにいって、旅びとに食べさせた。この時に
は、ぬすみがみつかってもいいと思った。どんな罰を受けても、旅びとの命を助けようと思ったのだ。