初体験シーカヤック

大島の千本桜を海から眺める。2002.3.30

 椎名 誠 野田知佑の本を読んでいつかはやってみたいとずっとあこがれていたカヌーに挑戦することにした。
 ネットサーフィンをするとわかるが、カヌーに関するサイトはとても多い。いろいろな人がカヌーで川を下ったり、海に繰り出したりしたことをホームページにしている。そうしたサイトを見ながら、いいなあ、楽しそうだなあと思っていた。その中から、山口アウトドアクラブのサイトを見つけた。ここを見ると、カヌーの講習や、ツーリングなどをしていた。益田から近い(といっても2時間かかるが)錦川のツーリングを募集していた。いきなり、家族全員で挑戦という方法もあったが、先遣隊ということで、私がまずやってみることにした。
 さっそく、メールで参加のお願いをした。すぐに返事があり、OKとのこと、岩国ICの入口近くのポプラが集合場所だった。1週間ぐらい前から、わくわくしていたのだが、天気の様子がどうもおかしい、29日に雨が結構ふった。心配していたところツーリングの内容変更のメールが入っていた。コースは大島の千本桜を海から眺めるシーカヤックツーリングということになっていた。シーカヤックもいいなあと思っていたので、コース変更でも参加することをメールで送る。ただ、難点は集合場所が岩国よりも40分ほど遠くなることだった。しかし、やってみたいという気持ちは、その距離にも萎えることはなかった。

 さて、3月30日(土)いよいよカヌー初体験の日がやってきた。大島までいかなくてはならないため、6時に起床。前日友だちと飲んで、1時半に寝ていたので少々寝不足。6時20分ぐらいに益田を出発。帰りに仮眠することを考えて寝袋などのちょっとしたソロキャンプ用品も積んで行くことにした。心配していた天気も昨日とはうってかわって快晴。
 益田からまず六日市まで9号線、187号線と上っていく、国道lにそって流れる川は、高津川である。カヌーのことを考えるようになって、高津川の見方も変わった。ここは瀬があるなあとか、ここは水量があって、ゆっくりとこげるんだろうなあと言う感じだ。しかし、高津川は、カヌー専用の区間があり、(日原道の駅裏)それ以外はどうもだめらしい。(鮎漁の禁漁期間のときはいいのかな?)できることなら、地元の川をカヌーで下れたらいいなあとは思う。
 六日市までくると、今度は187号線を岩国に向かって下ることになる。今度は最初のツアー募集があった錦川を右手に見ながら車を運転することになる。錦川の水量は確かに多い感じがしたが、にごりは少なくひょっとしたら、予定通りできなかなあという感じがした。しかし、初心者の私にとって、海の方が危険度が少なくてよかったような気もする。
 岩国手前で、右におれ玖珂方面から大島に向かう。6年ぐらい前にも同じ道を通ったことがあるが、そのときはあっちこっちで工事をしていたのだが、今回はその工事はすっかり終わっており見違えるようないい道ができていた。そのおかげで思ったよりスムーズに待ち合わせ場所の大島大橋のたもとまで来ることができた。
 集合時間は9時ということだったが、ついたのは8時40分だった。待ち合わせ場所は大島大橋のたもとということまでしかきいていなかったので、本州側か、大島側のどっちだろうかあと不安であったが、本州側のPエリアにカヤックを4艇ほどつんだワンボックスカーが止まっており、その横に3名いすに座ってくつろいでいた。近づいていくと、向こうのほうから声をかけてくれた。やはり、山口アウトドアの和田さんだった。その横に今回一緒に行く2名の女性がいた。和田さんはとても明るく楽しそうな感じの方だった。あと2人来るということで、待っている間に4人で今回のツーリングのことや、大島のことなど話が弾んだ。
 Sさんは、何回か山口アウトドアのツアーを利用されているということだった。Yさんは、カヌーは今回が初めてということで初心者が一人ではなく安心した。そうしているうちにあと2人が来て、大島に向けて出発である。 私は、和田さんの車に乗り海岸まで和田さんと話をした。和田さんは東京の方の会社に勤めていたそうであるが、地元に帰ってこうしたアウトドアショップを始めたそうで、まだまだこれだけでは食っていけないと言っていた。最初のころは雑誌に広告をのせていたが、ちょっとのせるだけで、3万とか4万とかになり、とても採算がとれないので最近は出しておらず、インターネットという新しい宣伝の方法ができたおかげで、こうしてやっていけるということだった。


練習した海岸と艇。美しい!

 午前中の練習場所に到着。とても美しい砂浜だった。早速ウエットスーツに着替えようとしているときに、車を止めた場所に近いログハウスからやってきたおしいさんが話しかけてきた。これからカヌーをするということを話すと車は家の庭に止めてもらってもいいということと、着替えはこの家を使って、とか、トイレも使ってなどとても親切にしてくれた。こんな人もいるんだなあと感激。トイレを使わせてもらった。ここのトイレは水を流すときものすごい音がした。今トイレを使った人がいるということが、外にいても聞こえるぐらいだった。
 大島の海は思っていたよりも断然きれいでびっくりした。イメージでは、山陽の海は汚れているのではと思っていたが、ぜんぜんそんなことはなく、南国を思わせるような海だった。


これがお世話になったトータスリバーさんのログハウス

さて、講習開始。
ストレッチをして、浜の上でまずは、パドルのこぎ方を教えてもらう。
 1.砂の上に置いた状態(右のみずかきが地面と平行)で両手で持つ。
 2.そのまま、頭の上にもって行き、パドルが頭につくぐらいのひじの曲がりでこぐ。
 3.右手はしっかりにぎり、右側をこぐときはそのまま、こぎ、左側をこぐときは、左手を少しゆるめ、水かきが水を捕らえるように角度をかえ、こぐ。
次にカヤックの座り方を教えてもらう。
 1.陸の上で座ってみて、足を乗せる台を調節する。カヤックの中の足の形はがにまたで、ひざが、カヤックの上にあたっているようにすること。これは、足とひざがカヤックについていないと体でバランスがとれず、すぐに転覆してしまうということだった。
沈したときの脱出の方法を教えてもらう
スプレースカートの付け方、はずし方など。

 和田さん自身が、沈した時にどのように脱出するのかを見せてくれた。
 最初にエスキモーロールという高等テクニックを見せてくれた。沈した時にはこれができるといいなあ、かっこいいなあと思った。
 次に、スプレースカートを取る脱出の仕方を実演・そこから海の上でカヌーに乗る乗り方などを見せてくれた。どれをとってもうまいものだなあと感心した。
 さて、いよいよ我々自身の進水。期待が高まる一瞬。最初だからということで、和田さんが後ろから押してくれる。その勢いでスーっと海面にカヌーが浮かぶ。感激。講習されたとおりにパドルを使う。結構思うように進む。この艇はラダーを出せるようになっていて、直進安定性が高いので、こぎやすかった。このラダーを引っ込めるととたんに左右にぶれ始め、まっすぐ進まなくなるので、いかにこのラダーの威力があるかよくわかった。 結構こげるのでバックしてみようとパドルの動きを反対にしてこいでみた。これも結構こげるなあとと「われながらうまいじゃん」などと心の中で思った瞬間であった。ぐらっときたと思ったら、なすすべもなく、そのまま海中へ没してしまったのだ。エスキモーロールをかっこよく決め脱出した。なんてことは絶対ありえず、半分パニクっていたが、スプレースカートを取り脱出。和田さんが「はっはっはっ沈第1号」といいながら近寄ってきた。
 そうだ、今日のツアーで「沈」はわたしが第1号だったのだということを改めて確認。急に恥ずかしくなる。しかし、スキーといっしょ、失敗は成功のもととすぐに考えを改め、せっかく沈したのだから、海上で艇に乗り込む方法をやってみることにした。しかし、これが、結構難しかった。みんなが見守るなか、3回目にしてようやく這い上がった。カヌーをあまくみてはいけない!ということを体で感じた出来事であった。さて、艇に水が入っているので砂浜に行き、艇から水を出そうと思って陸にあがったら、平衡感覚がおかしくなているようにまっすぐになかなか立てないのだ。暖かいといってもまだ3月。3月の海に頭から全身つかったのだ。特にウエットスーツがない頭部には相当きいたからだろうと思う。平衡感覚が本当に変でなかなか艇から水が出せなかった。ちょっとすると落ち着いて出せたのだが、3月の海はやっぱり冷たかった。でもこんな時期に海に入った自分がなんだかうれしかった。祝初泳ぎ、3月に経験!
 気を取り直して再び海へ。自分はうまいなどと油断していたのではまた、「沈」してしまうので自戒して再び練習。このとき、いろいろなこぎ方をマンツーマンで教えてもらう。和田さんありがとう!一通りこぎ方を教えてもらったら、なんとエスキモーロールを教えてくれた。私は、コンタクトなのでゴーグルを借りやってみる。そういえばさっき沈したときはゴーグルなしだったのにコンタクトが流れていかなくて本当によかった。
 最初は、手をもってもらって形を覚えることから始めた。イメージができたころに和田さんは他の人に教えに行った。「そのへんで練習しといてください。」という言葉を残して。さあ、今度は一人で挑戦してみる番だ。見た目にはかんたんなこのエスキモーロール。やってみるととてもむずかしかった。失敗するとスプレースカートをとり、冷たい3月の海水に身をとおじて脱出しなければならず、挑戦するたんびに相当の体力を消耗した。
 しかし何回目かになんとできたのである。水面に再びも起き上がると周りから拍手がおきあがった。いや・・・拍手がわきあがった。結局ツーリング前に2回、ツーリング後に2回ほどエスキモーロールが成功した。和田さんによると、ちょっと講習しただけでできる人は極々まれだということだった。「結構うまいのかな?」などと思っているとまた、沈するからそんなことは思わないようにしよう。
 午前中の講習の途中から、ご近所のお年寄りの方々があつまって、我々の講習を珍しそうに眺めて、和田さんに時々話しかけていた。「ウエットスーツは寒くないのか?」「その服の中には水ははいらんの?」それぞれの質問ににこにこと和田さんも答えていた。ウエットスーツはぬれても、保温効果があるので暖かいのだそうである。たしかに、さっき沈したわたしであるが、そんなに寒くはない。
 さて、午前中の講習が終わり、昼食の時間になった。前に沖縄で体験ダイビングのツアーに参加したことがあったが、その時の昼食は、サンドイッチとジュースだけという記憶があり、今回もそんなものだろうと思っていたら、なんと、キャンプのように、そこで調理を始めたのである。麻婆豆腐ができあがり、それをご飯にかけ、食べた。快晴の青空のもと、綺麗な海が見えるところで温かい昼食がとれるというのはとてもいいものだ。おいしかった。

 食後のコーヒーまで、和田さんが作ってくれ飲んでいたら、れいのおじいさんが「コーヒーを飲みにいらっしゃい」といって、ログハウスに迎えてくれた。重ね重ねいい人だあ。ここでももう一杯コーヒーを飲み、くつろいでから午後のツーリングへと出発した。


これからいよいよツーリング

 海は、引き潮のため海面が随分下がっていた。太平洋に面した海岸はやはり潮の干満の差が大きい。遠くに見える千本桜のところが目標である。さすがにみんな午前中の講習でパドリングもかろやかに、すいすいと進んでいく。海面は湖のようにおだやかで、とてもこぎやすい。うねりもほとんどなく、午前中に吹いていた風もなくなり、ツーリングにはベストコンディションである。午前中は余裕がなかったが、午後は少し余裕がでてきたので、写真を撮る事にした。
 何枚かとっていると、Yさんの艇が寄ってきて、私を撮ってれるということで、海上でカメラを手渡した。こんなこともできるぐらい余裕がでてきたんだなあと妙にうれしくなる。そこで、カメラに向かってポーズをとっていたら、和田さんが満面の笑みで艇を近づけてきてポーズ。記念の海上ツーショットのできあがりである。千本桜が近づいてくる。その近くの駐車場から数人が海の上の我々を見ていた。


左が私 右が和田さん

  近くの浜に上陸して休憩。このとき、ネーブルのおやつがでた。これがまた、甘くておいしかった。このとき私は、ねころがって、ゆっくりと休憩をしていたのだが、女性3名は、上陸したと思ったら、すぐに海にはいり、フォローティングベストの浮力を利用して、ぷかぷかと浮いたり、シュノーケルをして楽しんだりしていた。元気があるなあと男性陣は感心していた。やはり、女性の方が平均寿命が長いということが妙に納得できた。



途中の海岸で休憩 ぽかぽか陽気で気持ちいい


千本桜 お花見カヤック最高!

 休憩の後、今度は和田さんが木曜日にぼらの大群に遭遇したという場所まで行くことにした。案の定、今日も大発生をしていた。ぼらの大群は、海面に鼻をつきだして、帯のように泳いでいた。パドルの音が近づくといっせいに水しぶきをあげて、ちらばっていった。そこで、遠くで、パドルをして、あとは、慣性にまかせて近づくことにした。結果群れの中に突っ込むことはできなかったが、もう少しというところまでは行くことができ、楽しめた。そこまでで、遠くに行くのをやめ、あとは帰ることになった。
 途中の岩場まで、全力でこいでみましょうということになった。競争になれば、負けることは許されない。思いっきりこいだ。結構スピードがでるものである。
湖のような海面をすいすいとただよう
 あとは、のんびり出発した岸にむかって漂うようにこいだり、パドルを艇の上に載せていたりと海上のここちよいゆれに身をまかせて楽しんだ。
 岸近くになり、あとはあがってもいいし、練習をしてもいいという時間になった。私は、どうしてもエスキモーロールを完成させたいと思い再び挑戦。もう少しでできるというところまで、艇がおきあがるのだが、再び沈と言う感じだった。和田さんは、最後に頭がこなくてはいけないけど、頭を起こすタイミングがちょっとはやいと言うアドバイスをくれた。そのアドバイスをもとに再びチャレンジ。一回挑戦するが、ふたたび海中へ、このまま、スプレースカートをとって脱出してもいいけど、息はもう少し続きそうだったので、海中でもう一度、エスキモーロールの基本、体を前傾して艇に平行にパドルをもちあげ、一気に腰から起き上がった。できたのである。午前中も2回できたのであるが、今回もできた。まじうれしい。こうして、もう1回チャレンジして成功を確認して岸に上がった。
 ウエットスーツを脱いで、カヌーを片付けた。帰りに近くの温泉によって帰った。
 ツーリングも楽しかったが、一緒に講習を受けたYさん、Sさん、Mさん、Kさん、それと講師の和田さんとの出会い、一緒にすごしたこの時間がとても楽しかった。どの方もとても感じがよく、素敵だった。和田さんには儲けは少ないので申し訳ないのだが、5名程度のツーリングだとみんなとも会話でき、丁度いいなあと感じた。
 みんなと別れて、益田に向かって車を走らせた。出発するとき予想していたとおり、帰りは半端じゃなく睡魔に襲われて運転どころではなくなった。錦の道の駅にたどりつくのがやっとで、ここで仮眠をすることにした。車の後ろをフラットにして、そこで寝袋を出しで寝た。ぼろぞうきんのように眠り、気がついたら2時間がたっていた。

今回のツーリングの費用
  ツアー代金 7500円  この中に 講習 昼食 ツーリング カヌー、パドル、ウエットスーツ、ヘルメット、シューズ、ライフジャケットなど、ほぼ体ひとつで参加できる状態(着替え・水着などは別) これは本当に安い。  プラス帰りの温泉代500円  

 今度は錦川のツーリングに参加しようと思う。

今回大活躍した写るんです防水タイプ。水深5メートルまでなら海中撮影も可能なすぐれものである。私の沈にもびくともせず、しっかり働いてくれた。今回はデジカメにしなくて大正解。