6学年 国語科 学習指導案

7月5日(金)4校時

1.単元 本を読んで考えたことを書こう
2.教材(ヒロシマのうた 今西 佑行 )
3.ねらい
意欲的に問題を作ったり、意見を出したり、本を読んだり、文章に表したりしようとする。(関心・意欲)
・自分の意見や感想を論理的に文章にすることができる。(書くこと)

戦争の悲しさを追求的によむことができる(読むこと)
文章を読み取り、自分の考えを述べることができる(話すこと)
学習した言葉や漢字を正しく書く使うことができる(言語事項)

4.基盤
教材について
 文学教材全般について、その特徴を述べてみたい。
 文学教材は、説明文のように、正確に物事を伝達するための文章という性格よりも表現に工夫があり、味わいがあるはなやかな文章という性格が強い。その工夫や表現には作者が意図的に読者のこころをとらえるための仕掛け「異化」した部分が含まれており、この「異化」した部分を教材の特徴としてとらえることをとおして、子どもたちのイメージを一読したときよりも、みんなで違った解釈をぶつけていく中で新しいイメージに到達するという授業スタイルに適した教材と言えるものである。

新しい文学のために 大江健三郎  より

 略〜実際には、すべての言葉が使い古されクタビレているのである。それを洗いながす。真新しい言葉に仕立てなおす。その努力が必要なのだ。むしろ詩や小説はそのためにある。
 さきの若く生きいきとした言語感覚の短歌でいえばサラダという言葉、記念日という言葉が、この歌をつうじていかに新しく洗いきよめられていることか。それには端的にサラダプラス記念日という言葉のしくみが効果をあげている。〜略

 工夫の目的は、ありふれた、日常的な言葉の、汚れ・クタビレをいかに洗い流し、仕立てなおして、その言葉を、人間がいま発見したばかりででもあるかのように新しくすること。いかに見なれない、不思議なものとするか、ということだ。すなわちそれが、言葉を「異化」することなのである。 〜略

「ヒロシマのうた」について
 この物語は、戦争をテーマにした作品を多く手がけている今西祐行の作品で、原爆投下直後の広島の町を生々しく描写している。戦争の悲惨さを文章表現から感じ取ることができ、戦争時の「わたし」の心理も赤ちゃんとの出会いという設定によって、よりはっきりと読み取ることができるものである。後半は、ヒロ子が決して恵まれているとはいえない環境でもたくましく生きていく姿が表現され、戦争の悲惨さに対比され、よりきわだって前向きなヒロ子の生き方が読み取れるものである。人間はどんな悲惨な目にあっても、どんなにつらい境遇でも前向きに生きていくことができるということを作者のメッセージとして感じる。それと同時に、戦争とは大変悲惨なことであり、二度とおこしてはならないという強い願いも感じることができる作品である。

○ 児童について

         〜略〜

   授業について

   言語技術をどのように付けていくか

  目標とする授業のイメージは   

子ども達がいきいきと話し合いをし、不確かな読みから、より正確な読みを獲得していくような授業  

 このような授業ができるためには、基本的な力が必要である。基本的な言語技術を学習していきながら、上記のような授業を目指していきたい。

言語技術とは

     書くこと

      基本的な文章が書ける。

      正確に漢字が書ける。

      質問に答える文章が書ける

      TPOに応じた文章が書ける(礼状など)

     話すこと

      発表することができる。

      自分の主張する論理を話すことができる。

      日常会話ができる。

      TPOに応じた話し方ができる

     聞くこと

      要点を整理しながら聞くことができ、聞き終わったとき要点を言うこ

とができる。

      指示に対してすぐに反応することができる。

     読むこと

      音読・朗読ができる。
          内容をとらえ、場面や人物の心情を想像しながら読むことができる。(文章解釈力) 

 以上のことが、バランスよく授業の中で向上していくよう意図的なしかけをしていく。
 自分と違った意見に触れることにより、自分の読みや解釈を振り返り、修正をしてよりよいものへと近づいていくのが授業である。 

研究主題との関連「生きる力」→自ら課題を発見し、解決していく能力

(1)  教材文に対面して、自分には理解できないものはなにかを感じ取ることができる力。

      意味がわからない 言葉  文章   辞書を正確に引くことができる

      前後の文章の関係が理解できないもの

      登場人物の行動や変化の動機、きっかけ、目的などがわからない

      会話の整合性がない

      時間、場所がいつなのか、どこなのかわからない

      行動の対象は何なのか

       など               問題を作ることができる

(1)   自分なりの予想をもとにイメージを作る力。

      文と文の間を埋め合わせるように文を作ることができるまたは、イメージして語ることができる。

(2)   人の意見との違いに気がつき、どちらがより整合性があるのかを検討することができる。

      AかAかという問題にし、検討することができる。

      最初は、これはおかしいというのから検討し、より整合性があるものをのこし、最終的にはAかAかという問題にし、検討していく。

      検討の対象は 文章の記述であるがその証拠としては前後の記述、辞書で調べたときの正確な意味、生活体験からなどがある。

(3)   文章をよく読むと(違った意見に触れることが動機となる)最初に漠然と読んでいた読みと違ってくるということがわかる。

(4)   こうした体験を繰り返すことで、読む力が向上していく。

 

こうした学習を成立させる前提条件となるものは基礎学力である。

漢字が読める・書ける。 文章が読める・書ける。   

   直接的なねらいではないが、結果として期待したい事項 

     ☆価値ある教材にふれ、感動したり、共感したりすることを通じて心情面も豊かになることができる。

     ☆友だちとともに意見を出し合うことで、自分ひとりの読み(解釈)から変化した読み(解釈)にたどりつくという経験を通して友だちのありがたさ、ともに勉強することの意味やそのことについての感謝の気持ちを持つことができる。

     ☆授業で集中し、力を出すことの心地よさを感じることで心情が安定しおちついた生活を送ることができるようになる。

 授業の基本的な流れ

@   音読  繰り返し 繰り返し 何度も(一回一回課題を変えたり、目標を持たせたり、時にはチェックをしたりする)題名の横に○を10書き、1回読むごとに、ぬるなどの視覚的に努力がわかる環境を作る。教師もそのことを評価できるし、子ども自身も自分の努力について確認することができる。

A   意味調べ(基本的な言葉)これだけは調べようという課題を設定したり、目標の数字を提示したりするなどして意欲的に取り組ませる。

B   中心場面までの物語の流れなどを理解するために、教師からの1問1答式、もしくは簡単な問題づくりを通して(この過程でトレーニングもできる)子どもからの問題を解決していくなどする。             

 このとき、視点、対比、象徴、設定などを検討して教材解釈の道具を獲得させてもよい。 

C  中心場面で問題づくり この段階で更にくわしい意味調べなどを行わせる。(中心場面とは、主人公が一番大きな変化をするところ) ただし、教材によっては、その場面で教師の教材解釈での発見がない場合がある。その場合は、教師の教材解釈で発見した箇所を取り上げる。子どもの問題づくりから出発するが、最終的には教師が伝えたい部分に問題が集約されるように、その他の問題は、教師が答えるか、簡単に解決するなどの工夫をしていく。また、教師がイメージしている問題が子どもからでない場合は、教師から提示するなどして、教師からの発問としてもよい。(よい問題とは一見解釈が分かれるが、よく読むと答えはひとつという問題である。)

D  話し合いのところどころで、全部の児童の参加を促すために、自分の意思表明をさせる。自分はどっちの意見なのかを挙手等で確認する場面を設定する。(AかBか○か×か等)

E  最終的にはどちらの意見が多いかを確認して終了するが、教師の解釈を解説する。

F  朗読をする。話し合いによって新たなイメージができあがった段階で再び声を出して読む。

G  ノートの評価をする。

   丁寧にかけているか。

   課題をきちんと行っているか(意味しらべ・問題づくりなど)

   自分の考えを整理するためのノートになっているか。

  いいノートなどを全体に紹介する。

 授業中のすばらしい発言や、ポイントになった発言、問題などを解説するなどして、どういう発言がよいのかを子どもたちに教える。

言い方のトレーニングとして、こういう言い方がすばらしいというものを短冊などにして掲示する。(実際に子どもたちが学習の中で出してきたものがよい)

 発言のトレーニングとして、今日は、全員が発言しようというように目標をもたせ、意識的に簡単な問題を出し普段あまり言えない子に指名したりなどして徐々に自信をつけさせる。言えなかった場合は、授業終了後に、教師のところに集め、個別に意見を聞くなどして、とにかく、自分の考えを述べる回数を保証していくなどの工夫をしていく。

 今日、発言できた人などと聞き、その人数を調べ学級としての発言力を評価していく。(発言できなかった子がいやな感覚をもたないようにあくまでも明るく、さらっと触れる)

5.指導計画 

  今回の中心場面は、「わたしが初めて戦争とはこんなに悲しいことだと知ったところ。」として計画を立てた。

時数

内容

初発の感想

意味調べ、および要点の確認

原爆投下直後の広島の町の様子を読み、戦争のイメージを深める「・・死人と、動けない人のうめき声で、うずまっていたのです。」
「赤くにごった水」の検討

「このままにして、立ち去れなくなりました。」
「軍医のいる所へ連れていったらいいものかどうか・・」
 赤ちゃんの取り方の表現の変化の検討

(本時)

「戦争ということが、こんな悲しいものであることを、そのとき初めて知りました。」の検討

ヒロ子の強く生きようとする気持ちを読み取る

感想を書く

戦争をあつかった本を読む。

1.本時の場面の教材解釈

「戦争ということが、こんな悲しいものであることを、そのとき初めて知りました。」このことは、いったいどういうことなのであろうか。それまでにも、広島の町の悲惨さをいやというほど見ている私にとって、それ以上の悲しさをここで初めて経験したというのである。ではここでの悲しさとは何なのか?原爆のおそろしさなのであろうか。兵長にしかられてひどくぶたれたことであろうか。赤ちゃんのことを話せなかったからだろうか。・・・平和な世の中であったなら、よいことなのに、戦争の世の中では、正しくないことになってしまうから赤ちゃんのことを話せなかったととることが妥当のようにも思える。しかし、文章の中には、「話せなかった」ではなく「話さなかった」なのである。私の意志が働き、話さなかったのである。ではなぜそうしたのか。それは、いくら説明しても勝手な行動をとったことと自覚していたからなのである。自分が正しいと思っていることを兵長に言っても無駄だと最初から感じて、言わないでぶたれる自分に気づき、そういう自分の心理状態を生む戦争というものの悲しさをここで強く感じ取ったのである。

2.本時のねらい

「戦争ということが、こんな悲しいものであることを、そのとき初めて知りました。」の追求により、自分が正しいと思っていることを兵長に言っても無駄だと最初から感じて、言わないでぶたれる自分に気づき、そういう自分の心理状態を生む戦争というものの悲しさを感じ取った私の気持ちを理解する。

3.展 開

学 習 活 動

教えたいこと

主な発問  予想される児童の反応

読む

 P60L8〜P62L3 めいめい読み  一文読み

問題づくり

グループで話し合う

全体で話し合う

 

悲しさの中身は何でしょう

初めて知りました

兵長にぶたれたこと

正しいことを説明できなかったから

○説明しない自分に気がついたから

話しませんでした

 ここで初めて知ったのだから・・・

 どっちにしてもぶたれるのに・・・

 死んだ人とかを前にもたくさん見ているのに

 話しませんと話せませんは違う・・・

 

説明をする

    話しませんでしたということは、説明しても無駄と最初からわかっているから話さなかったという意味で、それを最初から理解してぶたれている自分に気がつき、そういう気持ちにさせている戦争というものが悲しいと感じたと解釈します。

 

朗読する

 

呼吸を意識して、気持ちを込めて読むようにさせる。

 

 

宿題としてある程度やってきているが、少し時間をとり、確認をする。

 

初めて知るということをクローズアップし、この場面で感じたということをおさえる。

 

話せませんと話しませんの違いを例文または、自分の体験に照らし合わせて理解させる。

 

平和な世の中ならほめられてもいいようなことが、ここでは我がままなことになるということを、ぶたれる前からわかっている自分に気がつき、そのような心理状態にさせている戦争が悲しいと感じたということを理解させる。