第5学年国語科学習指導案 

1.教材  「注文の多い料理店」(宮沢賢治作東京書籍「新しい国語五下」)

2.本時の位置     全8時間中4時間目

3.教材解釈

 2人の若いしんしが専門の鉄砲うちを雇って猟にきている。その専門の鉄砲うちがちょっとまごついてどこかに行ってしまったのである。なぜその時この2人はそのまま猟を続けたのだろうか。何がこの2人をこの山にとどまらせたのだろうか。

 2人のしんしは猟に慣れていたのだろうか。そうだとすると専門の鉄砲うちを雇うのはおかしい。道案内を雇ったわけではないのである。専門の鉄砲うちである。また、ぴかぴかする鉄砲をかついでいるのである。新品の鉄砲ではないかと思われる。すっかりイギリスの兵隊のかっこうをしていること、2人の会話の中にも「〜何でもかまわないから早くタンタアーンと、やってみたいもんだなあ。」というところや、「〜痛快だろうねえ。〜たおれるだろうねえ。」などの想像で物を言っていることなどからも猟の経験は今までにはないと考えられる。猟に慣れていたとは到底考えられない。

 では、何が猟を続けさせたのだろうか。このことを解決するためには止めようとするところに注目する必要がある。「ぼくはもうもどろうと思う。」この言葉が猟を止めるきっかけとなる。
ではこの言葉を今までは言わないで、なぜこの時言うことになったのだろうか。
[初めのしんしは、少し顔色を悪くして、じっと、も一人のしんしの、顔つきを見ながら言いました。初めのしんしとわざわざ書いていることや、ここで初めて顔色のことが書かれていることなどから、この直前の会話で顔色を悪くしているのが分かる。
この会話により機嫌が悪くなっているのである。機嫌が悪くなる理由、それは損害額を多く言われたこと犬の値段で負けたことで、初めのしんしはプライドを傷付けられたと考えるのが自然であろう。
しかし、そうだとすると、じっと、も一人のしんしの顔つきを見ながら次のことを言う必要があったのかという疑問が生じてくる。もし、プライドが傷付けられたことでもどろうと言うのであれば、じっと相手の顔を見るだろうか。顔つきを見ながらということは、相手の心情を見ながらということである。相手がどう反応するかを見ているのである。も一人のしんしがぼくももどろうと思うと答えたのに対して、まるで顔色が悪くなっているのを忘れたかのように、「そいじゃ、これできり上げよう。なあに、もどりに、昨日の宿屋で、山鳥を十円も買って帰ればいい。」などと言っている。相手が帰ることに同意したことが機嫌を直すことになったのである。
ではなぜ、顔色が悪くなったのかを追求してみると、機嫌が良くなったことの反対のことではないかと思われる。
それはなにか、帰るということを言わないということである。犬が死んでしまい、はじめのしんしは相手がもどろうと言うことを期待して、「実にぼくは、2400円の損害だ。」と言ったのではないだろうか。
この言葉の裏にはこんな犬が死んだのに、このまま猟を続けるのか、というメッセージがあり、それを、相手に送ったつもりだったのだ。
しかし、も一人のしんしはそのメッセージを受け取らず悔しそうに犬の損害のことを言っただけであった。この姿を見たはじめのしんしは、自分がもどることを提案しないかぎり、このままずっともどれないのではないかという不安がよぎったのである。そのことが顔色を悪くしてに表されている。そして、こちらからもどろうといっても、ひょっとしたら、まだ猟を続けるというのではないかという心配を持ちながら「ぼくはもうもどろうと思う」と言ったのだ。
顔つきを見ながら言いました。にこのことが表されている。では、この時まで、はじめのしんしはなぜ、直接もどろうということを相手に伝えなかったのだろうか。そして、いつからもどりたいと思っていたのか。疑問が生まれてくる。もし、一人で猟にきていたらどうであるのか、それはきっと、専門の鉄砲うちがまごつくようなところにきたならば、ひきかえすのではないだろうか。二人だったからこそこんなにまで山奥に入りこんでしまったのではないだろうか。2人だったからもどろうと言えなかったのである。いつからと、はっきりとは限定できないが、だいぶ前からもどりたいという気持ちは生まれていたのであろう。特に犬が死んで2人きりになった時、その気持ちは最大になったのではないだろうか。

 互いに相手がもどろうと言うことを期待しており、自分の方からはそういう弱音をはきたくなかった、そういったお互いに対しての見栄やプライドが猟を止めるきっかけをこんな山奥に来るまで持てずにいたのではないだろうか、そして、こうした見栄やプライドはさらに山猫軒の中にずんずんと入っていくことにもなっていったのではないだろうか。

4.本時のねらい

二人の若いしんしが専門の鉄砲うちがまごついても猟を続けた理由を追求するなかで@2人は初めての猟であるA顔色が悪くなったのは、も一人のしんしがもどろうと言う気配がなかったことが原因であるBお互いに対しての見栄がこんなにも山奥まできてしまった原因である、ことなどに気付かせ、2人の人物像を理解させる。

 5.展開 

展開の核と主な発問

予想される児童の反応

教えたいこと

予想される難関

 

 ○なぜ専門の鉄

   砲うちがどこ

   かに行っても

   猟を続けたの

  

ぴかぴかする鉄砲

○猟の目的

   ・仕事か遊び

    

   ・猟は何回目




















顔色をわるくした

○顔色を悪くし

 た原因は何か

 ・いつ顔色を悪


 

 1.猟になれて

     いるから

 2.山のことを

     知らない

 3.見栄のため

 

 

 

 1.仕事

 A.遊び

 

 @.初めて

 2.2回以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1.2人だけに

   なったから

 A.もどろうと

   言ってくれそ

   うにないから

 3.疲れて

 4.損害のこと

  

 

 ○ここでは結論を出すの

 ではなく、このことを解

 決するためにこの後の課

 題を解決していく。

 

 

 

 

 ○何でも構わないからな

 どと本当の猟師は言わな

 い。

 ○全体を通じて山のこと

 を知らない2人であり、

 専門の鉄砲うちを雇わな

 ければ山に入れなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○犬が死んだことを確認

 したすぐ後に顔色を悪く

 したのではない。2人の

 会話の後しんしがくやし

 がったのをみてもうもど

 ろうと思うと言っている

   こんな高い犬が死んだ

 のにまだ猟を続けるのか

 というメッセージが「実

 にぼくは、2400円の

 損害だ。」にかくされて

 いる。それに対して、も

 どろうと言うどころか、

 くやしそうにしているし

 んしを見て不安に思って

 いる。

   お互いが相手がもどろ

 うというのを待っていて

 こんな山奥にまで来てし

 まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○このことの証拠は文

 章に点在しており、こ

 も猟は遊びであること

 は容易に理解できるで

 あろう。しかし、初め

 ての猟であることはぴ

 かぴかの鉄砲といいう

 こと以外にも「〜痛快

 だろうねえ」などと想

 像で言っているところ

 に気付かせることをし

 ないと理解できないで

 あろう。

 

 

 ○いつ顔色が悪くなっ

 たのかをはっきりさせ

 ることで。損害額の差

 犬の値段の差でもどろ

 うと思ったととる方向

 にいきやすいが、その

 後のじっと顔つきを見

 ながらの記述を問題に

 することで、相手がも

 どろうと言わないとい

 うことへの不安が自分

 のほうからもどろうと

 言ったということに気

 付かせたい。また、相

 手がもどることに同意

 したことに対して、顔

 色が悪かったのを感じ

 させないような会話が

 あることにも注目させ

 たい。