10月3日

 今日は、日本でいえば小学校にあたるプライマリースクールへ訪問する。5歳から11歳までが通う学校である。
 3つに分かれて3つの小学校へ訪問する。我々は、チェスターから30分ぐらい離れた郊外の小さな学校、
KELSALL PRIMARY (ケルソール小学校)に行った。

 そこに着くと、にこやかに女性の方が迎えてくれた。この方が、この小学校の校長先生のDEVIN(デバイン)さんである。大変はつらつとしていて、若い校長先生だった。まず、通されたのは、控室のようなところで、校長先生自らコヒーや紅茶を入れてくださった。校長先生が学校の様子について話してくださった。この学校は192名の学校で小さいも学校である。人気があるけれども施設の関係でこれ以上児童数を増やすわけにはいかないそうである。通訳にはかつて日本に住んでいたというご年配の女性、キャシー・ピールズさんがこられた。この方は、ボランティアで私達のためにわざわざ来てくださった方である。日本に住んでいただけあって、随分こまかいところまで補足説明をしてくださったりして、とてもありがたかった。
 かつてイギリスは、教師自身が自分でカリキュラムを作って授業を行っていたそうだが、サッチャー首相になって、教育改革が行われて、全国共通のカリキュラムができたそうである。何年生でこれだけは獲得させるようにという感じだそうである。また、児童、一人一人に目標を持たせ、それに向かって勉強するようにしているそうである。ただ、日本のように地域によって同じ教科書を使うのではなく、達成すべきカリキュラムから、教師が自分でテキストを選んで授業をしているそうである。そのためか、1週間の学習予定をしっかりたてて、その上で授業に臨んでいるそうである。ここイギリスも教師という職業は、大変いそがしいそうである。また、日本でいう総合的な学習も盛んで、テーマにそって子どもたちがいろいろな方向からアプローチして学習していくということもしているそうである。そのテーマは、教師が設定して子どもたちにあたえているとのことである。ちなみに、この学校の3・4年生はローマについて学習しているクラスと、島について学習しているクラスがあった。
 また、とても驚かされることに、全国共通のテストが7歳の時と11歳の時に行われ、学校ごとの平均点などが新聞で公表されるそうである。その情報を得て保護者は学校を選ぶことができるそうである。また、評議員のような方が、学校に1週間ぐらい入って授業の様子を見て教員や学校の評価をするそうで、そうした情報と教育環境などをひっくるめて良い学校の順位をつけ、公表しているそうである。
 教員にとっては大変厳しい、シビアな世界だなあと感じた。本当に企業のような感じで生き残るためにはそうとう努力するようである。特に11歳のクラスでは、全国共通のテストがあるということで、そのテストにむけ必死になって勉強するそうで、11歳の担任をした後は、2〜3年は他の学年でリラックスしてもらうというようなことも言われていた。この全国共通カリキュラムには、体育などもあり例えば水泳は25メートル泳ぐということが入っているそうで、知識だけに偏らずバランスのとれた子どもの育成を目指しているのだなあと感じた。こうした厳しい環境は、日本でいうと私立の学校がそうなっているのだと思うが、公立の私たちは、まだこうした厳しさは経験していない。これから日本も学校が選べる時代になって行くと思われるが、本当に厳しい世界になると思う。イギリスではすでにこうした厳しい世界が始まっているのである。昔から教師をやっていた人は、この改革でパニックになり、やめた人もいるそうである。そのため、教師は若い人が多いということだった。 イギリスの教育で重視している教科は英語と算数、それに科学ということだった。この学校では、英語が60分、算数が50分を毎日行い、その他の教科については、年間の計画にそって行っているそうである。日本でいう時間割はなく、時期によって何をするのかが変わってくるそうである。
 校長先生の話が終わり、実際に教室を参観してみた。予想では、子どもたちは外国の人を見て、興奮状態になり、授業がすすまないのではないかと思ったが、案外どの学年の子も落ち着いていて、おだやかに迎えてくれた。
 印象的だったのは、教室が日本のように板張りに一人一人に机と言う感じではなく、板張りもあり、教室のすみのほうにはじゅうたんもあり、テーブルも4〜5人で一緒に使うようなテーブルだったし、ソファーもありといろいろなスタイルで学習ができるというところだった。2年生の算数を見たときには、ソファーに先生が座り、その横のホワイトボードを使って説明している感じだったが、児童は、その周りのじゅうたんにこしかけたり、その横のソファーに腰をおろしたりして聞いていた。その姿がとても自然で、いい感じだった。その説明の後、子どもたちはそれぞれの活動に入っていた。ある子は、立ち幅跳びで自分が何センチ跳べるかを実際に測っている子。ある子は、長さによって色分けにした棒を使って基本的なことを学習していたり、ある子はメジャーを使ってまるいものの長さを測っていたりとさまざまだった。これを一人の先生が行ったり来たりしながら教えていた。個別指導というのはやはり大変だなあと感じた。
 その隣のクラスでは、ある絵を見てその時にどんな会話がどんな心情でなされたのかを想像して、文章にしていた。これは英語の授業であるが、想像力を働かせる学習にもなっているとのことである。
 日本の紹介を授業することになっていたが、予定のクラスでは、紹介する前に質問タイムになってしまい、質問攻めにあった。趣味、どんな食べ物、どんなところに住んでいるのか?生活スタイル?火山はあるか?など多岐にわたる質問だった。井上さんやキャシーさんに通訳してもらいながら答えて行った。英語が話せたら直接コミにケーションがとれるのに、とここでも悔しい思いをした。
 昼食も子どもたちが食べるランチルームのようなところへ行き、教職員と一緒にいただいた。メニューは日本人の私達に配慮して下さったのか、ライスに野菜スープをかけたようなものだった。見た目はカレーライスだが、味はちがった。それと生野菜、フルーツ、ケーキ、コーヒーだった。昼食は、この学校のコックさんがつくり、配膳や片付けなどは、保護者のボランティアがするそうである。いつもは教師は別室で食べるそうである。また、この給食も全員が食べるわけではなく、弁当を持ってきている子もいるそうである。この席で副校長の先生と席が隣になり、何とか話してみようと試みた。ライスは良く食べるのか?ライスはすきか?とか、児童数についての話だとか、なんとか通じた部分もあり、うれしかった。ただ、言っていることが分からなくてキャシーさんに何度か助けてもらった。
 午後からは、スムーズに小学校生活に慣れてもらうという意味で4歳の子どもが来ている幼稚園のようなところを見学した。ここでも、子どもたちは穏やかに迎え入れてくれた。よごしてもいいようにエプロンのようなものが備え付けてあって、それを着て絵をかいたりしていた。イギリスの子どもは本当にかわいく、人形がうごいているような感じだった。

お人形のよう

 午後も日本紹介授業をよていしていたが、ここでは、日本の学校の一日を写真を見せながら説明したり、教科や行事について説明したりした。ここの教科と行事の部分の担当になっていたが、ほとんど日本語で行い、井上さんに訳してもらうという感じになった。事前にもっと練習をしておくべきだったと反省した。
 最後に、校庭を見せてもらったのだが、日本の校庭のイメージとは随分違い、全面芝生だった。一見公園かなにかかと見間違えるような感じで広々と芝生に覆われた校庭だった。その横にはアスファルトでしきつめられたバスケットコートや、ケンパーコースのようなものがあった。また彫刻家が学校に2〜3日きて子どもたちと一緒に勉強をした時につくった丸太をくりぬいたいすなどがあり、運動をする場所というよりくつろぐ場所という感じもした。

←これが校庭

 控え室に帰って、折り紙で鶴をおったり、かぶとを折ったりしてお土産にした。校長先生が大変興味を示してくださり、教えてほしいといわれた。歓迎レセプションの席で教えることになる。こうしてケルソール小学校の一日が終わった。内容が濃く、いろいろなことがあり頭が消化不良を起こしそうになるほど充実した一日だった。この小学校の子どもたちはとてもかわいく、素直な子どもたちだった。すがすがしい気持ちでバスに乗り込んだ。
 今日のもう一つの行事は、チェスター側が設定した歓迎レセプションである。

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