丁度1年前に最初のカヤックを申し込んだのが、この錦川のツーリングだった。そのときは、前日の雨で増水していたために、海に変更になったのであるが、今回は、どうだろうか? 
 不安の中、再度申し込みを行った。油谷に一緒に行った江角氏と2人での参加である。
 結果は、幸いにも、ここ何日かいい天気が続き、増水はなく、いいコンディションで実行できた。

 待ちに待った3月29日の朝。前日家の荷物を片付けていて、夜遅かったのであるが、さすがにこういうときはパッと目がさめる。きっちり6時30分E氏が迎えにきてくれ、岩国に向かって出発。集合場所である、岩国IC前のポプラについたのが8時20分ぐらいだった。ポプラで朝食のおにぎりを買い、それを食べて和田さんを待つことにした。8時45分ごろに和田さんが登場。和田さんの笑顔に出会いなんだかなつかしい感じがした。1年前に一度ツアーに行っただけなのだが、昔から知っている旧友ように思えてくるのはなぜだろう?人柄なのか?
 さて、和田さんに今回の参加者の人数について質問すると、
 「スタッフを入れて全部で7人です。野郎ばっかり。はっはっはっ。ちなみに明日は女性が5人。はっはっはっ。」
という豪快な笑い声と共に答えが返ってきた。やっぱりカヤックをする人は男が多いのかな?と思い、
 「和田さんのところのツーリングで、割合から言うと、男性と女性は、どちらが多いんですか?」
と聞くと
 「う〜ん。女性かなあ。今日のように野郎ばっかりというのはめずらしいですよ。」
という返事。E氏と顔を見合わせて
 「明日にしときゃあよかったなあ。」
と男らしい会話がかわされた。
 こうして野郎ばっかりの錦川ツーリング集団が結成されたのである。
 最初に、車でゴール地点まで移動して、そこで着替えをした。ウエットスーツである。前回大島の海で一番最初に沈をした私としては、このウエットスーツのありがたさをよく知っている。3月の海や川でも、これさえあれば大丈夫。今日は、このウエットスーツの恩恵を受けることになるのかどうなのか?できることなら恩恵を受けたくないけど・・・・。とかなんとか言っているが、念のためにゴーグルまで持ってきている私。沈する覚悟はできているのであった。沈してしまったら、いさぎよく前回同様ロールの練習をしようとも思っている。

  着替えが終わり、車を置いて、和田さんの車に野郎どもが乗り込み、すでにカヤックが置いてあるスタート地点に移動した。
 朝来た道を戻って、沈下橋がある河原に降りた。そこに、色とりどりのカヤックが置いてあった。準備運動をして、ヘルメット、ライフジャケット、スプレスカートを装着した。油谷の時はヘルメットをしていなかたが、さすがに川は、沈したときに底の岩かなにかに頭をぶつけることがあるので、必要だと感じた。安全第一。
 出発。海と違って川は流れがある。(あたりまえか)ほうっておいても艇は進んでいく。愉快。愉快。ただ、艇の側面に流れを受けると、すーっと回転してしまうので、なれるのに少し時間がかかった。ただ、今回は錦帯橋をはさんで、10キロという下流域のツーリングなので、激流を下るという上流域のようなスリルに満ちたツーリングではない。比較的海に近いツーリングである。
 出発間もないころは、パドリングに神経が集中して、景色を楽しむ余裕はなかなか出てこなかったが、慣れてくると岸の菜の花の黄色の鮮やかさが目に入ってきた。和田さん曰く、例年の方がいっぱい咲いているということだった。どうもその原因の一つに菜の花がたくさんさいていたところが護岸工事をしているということだった。
 休憩の時、一緒にツアーに参加している人が、
「こんなところで水害なんて聞いたことがない。何のために護岸工事をするのかわからない。」
とぼやいていた。同感。同感。
 海にはないスリル、それは瀬(今回はとても緩やかな瀬ではあるが)。白い波がたって音を立てて流れている瀬を漕いで下りるのはとても楽しい。
 昼食のために岸にあがった。まず最初にやったことは、薪を集めることだった。ぽかぽか陽気とはいっても、まだ3月。暖をとるために焚き火をするのである。 

 焚き火で暖をとっている間に、和田さんが昼食を作ってくれた。和田さんは昼食の荷物などがあるため、シットオンカヤックという艇(すっぽり中に入るのではなくて、上に乗るタイプの安定した艇)でなんとツーバーナーまで持ってきていた。スープとホワイトソーススパゲティだった。
 私は、料理ができる間にちょっと横になったところ、なんと本当に寝てしまった。昨晩遅かったこと、今朝早かったこと、ぽかぽか陽気だったことが重なってとてもいい気持ちで15分ぐらい眠ってしまった。しかし、料理ができるとむくっと起き上がるところは私らしいが、とってもおいしい昼食をいただき、再び元気が出てきた。


昼食のため上陸。実は後ろに岩国城が見える。

 午後は、錦帯橋に向かってパドリング。錦帯橋は、丁度去年から50年に一度という架け替え作業をしているところで、昨年かけかえた箇所。今年架け替えた箇所。50年前からの箇所の3色の錦帯橋になっている。言ってみれば50年に一度のめずらしい状態の錦帯橋なのだった。


右から50年前、昨年、今年の橋。川の右側が魚道。

 実は今日のコースの中で、一番の難所がこの錦帯橋の下なのである。なぜかといえば、錦帯橋のすぐ下に水止めが作られているからなのだ。通れるところは魚道が作られている1箇所だけ、しかも、この魚道と水止めは直前まで見えないというのである。水止めの方に行ってしまうと小さい段差ができていて沈する可能性が大きいのだ。しかも、今日は錦帯橋は桜は咲いていないけれど、この陽気にさそわれて、たくさんの人出でにぎわっていた。こんなところで沈をすると、と〜っても恥ずかしいことは想像できる。これはなんとしても沈だけは避けたい。
 一度橋のたもとに上陸して、コースの確認をすることになった。多くの人の中をカヤックで通る。子どもたちが手をふって「がんばってー」と声援を送ってくれる。カメラを持った人たちがぱちぱちとこちらを撮影する。なんだか、ちょっとしたスターのような状態。恥ずかしい。
 上陸したら上陸したで、今度はなにやら変な集団が近寄ってきて一緒に写真をとってほしいとたのまれた。といっても、相手にとってはよっぽどこちらが変な集団だったのかもしれない。その集団は佐々木小次郎がここ岩国で生まれたということで、NHK大河ドラマにあやかって岩国の観光PRのためと思われる「佐々木小次郎集団」であった。その集団と一緒に写真を撮った。カヤックの服装をしたヘルメット集団が刀を持って、時代劇の服装をした集団と一緒にポーズをとっているのである。どう考えても変だ。


佐々木小次郎集団とカヤック集団と応援の子どもたち


新しい橋の下で

 橋の下は、新しく架け替えられたばかりなので、まだ木の香りがただよっていた。E氏と一緒に記念撮影をして、小休憩を終えた。コースの確認は、和田さんが先に行って、目印のところまで、歩いてくれて、パドルを立ててくれることになった。我々はそのパドルを目標にこいでいけばいいのである。今日一番の難所は、そのおかげで難なくクリア。
 その後は、海のようにほとんど流れがなくなり、のんびりのんびりのツーリングとなる。再びぽかぽか陽気のため、カヤックに乗っていながら睡魔におそわれるほど、のんびりしたものだった。
 錦川は思った以上に大きな川で、途中で何本かに分かれているようなところもあった。そういうところに入ってみると秘境のようなところもあり、結構おもしろかった。
 今日は沈することもなく無事ゴール。ゴーグルは使うことはなかった。ロールは、もう少し暖かくなってから練習することにして今日は、ぬれないまま終了することにした。
 カヤックを降りて、着替えをし、和田さんと記念撮影をしてお別れした。
 海もいいけれども、川は川のおもしろさがある。変化があるというのがおもしろい。今回は流れが緩やかな下流域だったが、今度挑戦するときは上流域もやってみたいなあと思った。


ここが、ゴール地点。


3人でツーリング終了記念撮影。真ん中が和田さん。

 追伸  実は和田さん、昨年結婚されたそうである。その相手は昨年大島のツーリングの時に一緒にツアーに参加していたSさんだったのだ。驚き!&おめでとうございます。